会社を辞めたあと、職業訓練という道もある|給付を受けながら学び直すという選択肢

退職後・再スタート

この記事は2026年6月時点の制度をもとに書いています。給付の金額や要件は改正で変わることがあるので、実際に動くときは必ずお住まいの地域のハローワークで最新を確認してください。

会社を辞めると決めて、準備もして、なんとか辞めたあと。
ふと立ち止まると、「で、わたしはこれからどうするんだろう」という大きな問いが残ります。

すぐに次の会社を探す。もちろん、それも立派な道です。
でも実は、もうひとつ「学び直しながら、お金の支えも受けられる」道があります。それが職業訓練です。

正直に言うと、わたし自身は、次の当てがまったくなかったわけではないけれど、受かるかどうかもまだわからないうちに勢いで辞めてしまったタイプで、当時この制度をちゃんと知りませんでした。知っていたら、もう少し落ち着いて次を選べたかもな、と思います。焦ったまま次の会社を決めてしまって、「入ってみて初めてわかった」失敗もいくつかやりました。だからこの記事は、「あのとき自分が読みたかった説明」のつもりで書いています。

先にひとつだけ言っておきたいのは、これは「就活か、訓練か」の二択をあなたに迫る記事ではない、ということです。この二つは、実は両立できます。 ここでは「こういう選択肢があって、しかもお金の面でこんなメリットがある」というのを、まず知ってもらえたら十分です。


職業訓練(ハロートレーニング)って、そもそも何?

職業訓練は、国がやっている公的な学び直しの制度です。最近は「ハロートレーニング」という愛称で呼ばれています。

ものすごくざっくり言うと、

  • 受講料は基本タダ(テキスト代などは自己負担)
  • パソコン・経理・医療事務・介護・WEBデザイン・プログラミングなど、仕事に直結するコースがたくさんある
  • 通っている間、お金の支援を受けられることがある(ここが今日いちばん伝えたいところ)
  • 窓口はぜんぶハローワーク

というものです。

そしてこの職業訓練、大きく2つの種類に分かれています。どっちに当てはまるかで、もらえるお金の仕組みが変わってきます。

種類主な対象
公共職業訓練おもに雇用保険(失業給付)を受け取れる人
求職者支援訓練雇用保険を受け取れない/もう受け取り終わった人

「自分は失業給付がもらえるんだっけ?」というところが分かれ道になります。これは前の記事②でお話しした内容と、まっすぐ繋がる部分です。


いちばん知ってほしい「お金」の話

ここが、この記事のいちばんの肝です。
職業訓練の何がうれしいかというと、「タダで学べる」ことよりもむしろ、通っている間の生活を、お金で支えてくれる仕組みがあることなんです。

① 失業給付がもらえる人(→ 公共職業訓練)

記事②でお話しした失業給付。特に会社都合(特定受給資格者)になれた人や、受給日数がまだ残っている人は、この公共職業訓練がかなり強い味方になります。お金のメリットを並べると、こんな感じです。

▼ 給付制限が外れる(自己都合の人に効く)
自己都合で辞めた場合、本来は失業給付の前に「給付制限」という待ち時間があります。でも、公共職業訓練を受け始めると、この給付制限が解除されます。 制限期間の途中でも、訓練を始めたタイミングから基本手当を受け取れるようになるんです。

▼ 給付日数を使い切っても、訓練が終わるまで延長される
これがいちばん大きいかもしれません。通常、失業給付は決められた日数(自己都合で90〜150日など)でストップします。でも、訓練の途中で日数が切れても、「訓練延長給付」として、訓練が終わる日まで基本手当が支給され続けます。 「お金が切れる前に、焦って合わない仕事に飛び込む」を防げるわけです。

▼ 受講手当・通所手当がつく
失業給付とは別に、ハローワークが受講を指示したコースなら、

  • 受講手当:1日500円(上限40日=最大2万円)
  • 通所手当:通学の交通費(上限 月42,500円)

が出ます。さらに、家族と離れて通うことになる場合は寄宿手当(月10,700円)もあります。

※ 受講するには筆記・面接などの選考があり、「訓練開始日に給付日数の残りが一定以上あること」などの条件もあります(給付制限のある人・ない人で必要な残日数が違います)。早めにハローワークで相談しておくと、タイミングを逃しにくいです。

② 失業給付がもらえない人(→ 求職者支援制度)

雇用保険に入っていなかった、加入期間が足りなかった、もう受給を終えてしまった——そういう人のための仕組みもちゃんとあります。それが求職者支援制度です。

一定の要件を満たすと、訓練を受けている間、職業訓練受講給付金がもらえます。

  • 職業訓練受講手当:月10万円
  • 通所手当:交通費(上限 月42,500円)
  • 寄宿手当:月10,700円(別居して通う必要がある場合)

ただし、こちらは生活を支えるための給付なので、収入や資産の要件があります(2026年時点)。

  • 本人の収入が月8万円以下
  • 世帯全体の収入が月30万円以下
  • 世帯全体の金融資産が300万円以下
  • 今住んでいるところ以外に土地・建物を持っていない
  • 訓練にすべて出席する(やむを得ない理由で証明できる場合などは8割以上の出席)
  • 世帯の中で、同時にこの給付金をもらって訓練を受けている人がいない ほか

「収入の要件をちょっと超えてしまう」という人でも、本人の収入が月12万円以下かつ世帯収入が月34万円以下なら、通所手当(交通費)だけは受け取れる特例もあります。

それでも生活費が足りないときのために、求職者支援資金融資(単身は月5万円、扶養家族がいる人は月10万円を上限に貸付。利率2%・担保保証人不要)という制度も用意されています。

要件が細かいので、「自分は当てはまるかな?」と思ったら、自己判断せずにハローワークで聞くのが確実です。最終的に決めるのはハローワークです。


メリットと、正直なデメリット

いい話ばかり並べてもフェアじゃないので、両方書いておきます。

メリット

  • 受講料が基本タダで、お金の支えを受けながらスキルを身につけられる
  • 「資格も経験もないから不安」という分野に、未経験から入りやすい
  • ハローワークが訓練中〜訓練後まで就職活動をサポートしてくれる
  • 同じ立場の仲間ができる(地味だけど、これが結構支えになります)

デメリット・注意点

  • 時間がかかる:コースは2か月〜長いと2年。すぐ働きたい人には向かないことも
  • 必ず希望のコースに入れるわけではない:選考があるし、人気のコースや地方では募集が少ないこともある
  • 出席はわりと厳しい:休みすぎると給付金が止まることがある
  • 給付の要件や残日数のタイミングで、受けられる支援が変わる

つまり、職業訓練は「魔法の杖」ではありません。でも、お金の不安をやわらげながら、次の方向にじっくり舵を切りたい人には、本当に心強い選択肢です。


「就活か、訓練か」で迷ったら

最初に書いたとおり、これは二択ではありません。

訓練に通いながら求人を探してもいいし、途中でいい会社が見つかれば、訓練を終える前に就職してもかまいません。むしろ「いい仕事が決まったら出ていく」のは歓迎されることです。だから、まず動いてみて、合わなければ方向を変えるくらいの気持ちで大丈夫です。

ざっくりした目安として——

  • すぐにでも働きたい・経済的に待てない → まずは就職活動を軸に
  • 未経験の分野に挑戦したい/前職がしんどくて少し休んで立て直したい → 訓練が効きやすい
  • どっちか決められない → ハローワークで両方の話を聞いてから決めてOK

「焦って次を決めなくていい」——これは記事①で書いた「逃げていい」とも繋がる話です。立ち止まって学び直す時間は、逃げでもサボりでもありません。


申し込みの流れ(窓口はハローワーク)

難しそうに見えて、入り口はシンプルです。

  1. ハローワークの受付で「職業訓練の相談がしたい」と伝える
  2. 相談しながら、受けたいコースを選ぶ
  3. ハローワークで受講を申し込む
  4. 訓練を行う学校などの選考(筆記・面接など)を受ける
  5. 合格したら、ハローワークが受講をあっせん(指示)してくれる
  6. 受講スタート(訓練中〜終了後しばらくは、原則月1回ハローワークに通って就職相談)

給付金を希望する場合は、職業相談のあとに支給申請をします。給付金は申請からおおむね1週間ほどで口座に振り込まれます。

ここで大事なのがタイミングです。失業給付の「受給資格が決まった日」や「給付制限の有無」「残りの給付日数」によって、訓練でどこまで得をできるかが変わります。辞めたあと、なるべく早めに一度ハローワークで相談しておくと、損をしにくくなります。


おわりに

会社を辞めたあとって、「早く次を決めなきゃ」という気持ちに追い立てられがちです。わたしもそうでした。でも、お金の支えを受けながら学び直せる道があると知っているだけで、その焦りは少しゆるみます。

職業訓練は、「次のあなた」へ向かうための、ちょっと遠回りに見えて実は近道な選択肢です。使う・使わないは置いておいて、こういうドアがあるということだけ、頭の片隅に入れておいてもらえたらうれしいです。

そして、しんどくて立ち止まりたいなら、立ち止まっていい。
あなたは、次に進むために自分を急かさなくて大丈夫です。


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参考・出典(公的機関)

この記事の制度や金額は、以下の公的機関の情報をもとにしています。最新の内容や、ご自身が対象になるかどうかは、必ず下記やお近くのハローワークでご確認ください。

  • 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html
  • 厚生労働省「ハロートレーニング(公的職業訓練)特設ホームページ」
    https://www.mhlw.go.jp/hellotraining/
  • ハローワークインターネットサービス「職業訓練(ハロートレーニング)コース検索」
    https://www.hellowork.mhlw.go.jp/

※この記事の制度・金額は2026年6月時点のものです。要件や上限額は改正されることがあります。
実際の手続きの前に、必ずお住まいの地域のハローワークで最新の情報をご確認ください。

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